内覧会レポート

さくら 都内でも桜がほころび始める4月のころ、2011年3月3日に竣工された知粋館の内覧会が行われました。 知粋館外観

世界初の3次元免震住宅 知粋館は東京都杉並区阿佐ヶ谷の閑静な住宅街にあります。大きな窓が印象的な、9室を有するマンションです。

この建物は免震建築物ですぱっと見たところの外観はおしゃれなデザイナーズマンションといった風ですが、インターホンの近くにはこの建物が免震建築物であることを示す看板があります。
「この建物は免震建築物です。国土交通大臣による認定を受けた世界初の3次元免震建築物です」と書かれています。

免震層と地盤間にある側溝建物に入ろうとすると、建物の周りがぐるっと”お堀”のようになっていることに気づきます。これはおしゃれでも雨除けでもなく、免震建築物の特徴の一つ。免震構造は周りの地盤と切り離して免震層(今回では3次元免震装置)を置くことで、”直接地震動を建物に伝えない”ことで被害を軽減する構造のため、周りの地盤と建物の基礎がつながっていません。この大きな知粋館そのものが、後に登場する3次元免震装置の上にどんと乗っています。

部屋の写真1内装は白を基調としたフローリング。どの部屋も採光が多く、良く晴れた内覧会当日は暖かな春の日差しに満ちていました。窓際でお子様やネコがうたたねしそうな温かさです。
外から見えた大きな窓のところは、吹き抜けになっています。

吹き抜け普段は外には出ていませんが、クローゼットの中にある配電盤は覗くとなぜかLANケーブルが。知粋館は各部屋、各所にエネルギーモニタリングのセンサーが設置されており、温度・湿度・照度・風速を1時間単位に測定・記録しています。得られたデータは"見える化"され、居住者の生活をよりよくする参考資料として役立ちます。「いいものをつくってきちんと手入れして長く大切に使う」が知粋館のテーマです。

地下に続く写真そしてついに本建物の最も重要な構造、3次元免震装置へ。地下に向かう急な階段を下りると・・・

3次元免震装置 どっしりとした免震装置がお出迎えしてくれました。四隅と中央で、計8基。間近で見るととても迫力のある大きさです。(比較:写真の中に立っている筆者は165cmです)地下の暗い明かりの中、赤色と青色がとても鮮やかです。

黒のゴム部分は地震が起こった時に動く部分です。2010年12月24日の浮上式以降は常時空気が送り込まれていて、もちろん人が押してみてもびくともしない固さですが、地震の際は縦10cm, 横は60cmも動く柔軟性があります。

さまざまな免震システムまた建物が斜めに揺れ転倒しようとする(ロッキング運動)のを抑えるための抑制装置(手前黄色のパイプ)、免震装置と協働して大幅な揺れを抑えるためのオイルダンパー(右・左にある白いバー)など、様々な免震システムが組み込まれています。

水道管免震構造は揺れを低減させる構造ですが、ある程度揺れることが前提の構造のため、各所で破壊が起こらないよう、工夫がされていました。例えば地続きになる水道管などは、一部をゴムに置き換えることでゆがみを吸収できるようにしてあります。

3次元免震装置の模型ちなみに1階展示スペース(兼セミナールーム)では3次元免震装置の模型があり、こちらは触ると横へ縦へ動きます。是非触ってみてください。

見学にきた社員たち今回のレポートでは社員のみの見学でしたが、赤ちゃんを連れた家族が何組か訪れ、笑い声がこぼれる賑やかな内覧会となりました。
安全で、安心で、永く大切に使える知粋館。構造計画研究所は、これからのサスティナブル社会に向けて貢献できるよう努力してまいります。





2011/04/02 知粋館にて